約束のものを手に入れるために必要なのは忍耐です

立川チャペル便り「ぶどうぱん」2012年冬号より

霊性神学の分野で有名なユージン・ピーターソン氏は、詩篇120-134篇の「都上りの歌」の解説書の表題に、無神論哲学者ニーチェのことばを用いました。それは、“A Long Obedience in the Same Direction(長期にわたる同一方向への服従)”というものです。ニーチェは、キリスト教は弱者の道徳であり、負け犬の遠吠えのような態度を肯定し、人間に本来与えられている「生きる力」を減らし、愚民化する方向に働いていると非難しました。ピーターソン氏は、現代のクリスチャンが、しばしば、身近な解決策ばかりを求め、結果を待つ忍耐心が欠けてゆく傾向にあることに心を痛め、ニーチェの警告にも耳を傾ける必要を感じたのだと思われます。ニーチェは、「無事安泰を願うとは、人間の没落を望むことであり……苦悩の、大いなる苦悩の訓練 ― ただ、この訓練のみが人間のすべての成長を創り出した」と言いました。 “約束のものを手に入れるために必要なのは忍耐です” の続きを読む

新しい天と新しい地を待ち望む教会として

立川チャペル便り「ぶどうぱん」2011年秋号より

今、多くの教会で、自分たちの語ってきたキリストによる「救い」を、もう一度聖書の原点に立ち返って見直す必要があると語られてきています。「救い」を、「イエス様を信じると、死んでも天国に行ける、また、この地においても、神の子として幸せに生きられる……」という、個人的なことに矮小化してはいないかという反省です。このように考えていると、悪いことが起きると、「神を信じて何になるのか……」という失望につながります。しかし、聖書には、神の壮大な救いの物語が記されています。一時的な個々人の苦しみがあっても、それを通して「神の民」としての新しい世界が開かれてきています。 “新しい天と新しい地を待ち望む教会として” の続きを読む

役立たず……と思えるとき

立川チャペル便り「ぶどうぱん」2011年夏号より

「それはあなたが、私の奥深い部分を造り、母の胎のうちで組み立てられたからです。私は感謝します。恐ろしいほどに、私は不思議に造られました。」(詩篇139:13、14節)

フェイスブックで多くの友人たちが被災地での支援活動にいち早く向かっているのを見ながら、「僕も何かがしたい……」と焦っていました。すると横で妻が、「あなたが行っても、かえって迷惑になるわよ。あなたは、そんなタイプじゃないから……」と言ってくれました。 “役立たず……と思えるとき” の続きを読む

主よ、あわれんでください……

立川チャペル便り「ぶどうぱん」2011年春号より

この大震災を巡って、ある人は、人間の傲慢に対する神のさばきと言い、ある人は、日本に福音が広がるチャンスと言い、また、日常生活のすべてが神の恵みだとわかったと言います。私も礼拝説教のたびに、何かの解釈をしています。しかし、ただ、おろおろと、「主よ。あわれんでください……」と泣きながら祈る、そんな姿こそが、信仰の原点なのではないかと、ふと思いました。 “主よ、あわれんでください……” の続きを読む

恐れるな。わたしは、あなたとともにいる

立川チャペル便り「ぶどうぱん」2011年冬号より

「紅白歌合戦でAKB48の「Beginner」を聞いて、これを書いた秋元康さんは本当にこの時代をよく見ていると感心しました。「昨日までの経験とか、知識なんか荷物なだけ……新しい道を探せ!他人(ひと)の地図を広げるな!……今 僕らは夢見てるか、子どものようにまっさらに……支配された鎖は引きちぎろう Change your mind 何も知らなくていい Beginner!失敗して、恥をかいて、傷ついたことトラウマになって あんな思い二度と嫌だと 賢くなった大人たちよ チャレンジは馬鹿げたこと?リスク回避するように愚かな計算して何を守るの?何もできない、すぐにできない だから僕らに可能性があるんだ、今が時だ、君は生まれ変わった Beginner!」 “恐れるな。わたしは、あなたとともにいる” の続きを読む