株価のバブル崩壊からの回復〜伝道者の書11章1–5節

 日本の株式市場がようやく34年前のバブル崩壊のトラウマから自由になるきざしが見えてきています。日経平均株価が1990年2月の35,000円の水準に達したと話題になっています。

 僕はもう証券会社から離れて37年間も経ちますから、今更、株式投資を勧める気持ちはまったくありません。素人が手を出して、妙な専門家気取りの人にだまされて大損したなどということが起これば、目も当てられませんから……

 でも、日本の金融市場はバブル崩壊以降、あまりにも歪んでしまってることは確かで、これが日本経済の低迷と切り離せない関係にあると思われます。
 具体的な金融機関の名をイメージさせて恐縮ですが、かつて日本の都市銀行の首位争いをしていたところが合併して、三大銀行になっています。
 たとえば、その一つの銀行の現在の株価から判断すると、その銀行の配当利回りは約3.9%です。百万円相当の株を買うと、年間4万円近くもの配当が確実に見込まれるのです。その銀行に定期預金でお金を預ける代わりに、その銀行の株を買う方が、ずっと高い収益が見込まれます。
 そして、その株の純資産倍率は0.67倍です。簡単に言うと、現在の株価は、その銀行を今すぐ解散したとしての資産価値の67%の価値にしかなっていないというのです。
 日本の多くの大手企業の純資産倍率がそのように1倍を切っているところが多いことに対し、自社株を買って株価を釣り上げてでも、正常な水準の株価にしようという動きがあるために、現在の株価上昇が起きているとも言われます。
 また、日本の円の価値が、主要通貨に対して下がりすぎているために、海外投資家は円資産を増やす動きを始めており、その際にこのような高利回りの株は大きな投資対象になります。

 日本全体のムードは34年前のバブル崩壊以降、大きく変わってしまったように思えます。安心安全が一番で、リスクを回避する行動がいつも優先されます。
 しかし、3千年余り前に記された伝道者の書11章1–5節には次のように記されています(私訳)。これは簡単に言うと、将来が分からないからこそ、資産を分けて投資するようにという勧めです。

あなたのパンを水の上に流せ。
多くの日々がたってから、あなたはそれを見いだすのだから。
受ける分を七つか八つに分けておけ。

地の上にどのような災いが起こるかを、あなたは知らないのだから。

雲が雨で満ちるなら、それは地に向けて空(から)になる。

木が南に、または北に倒れようとも、木は倒れた場所にそのままになる。
風を見守っている者は種を蒔かない。雲を見ている者は刈り入れをしない。

あなたは、風(霊)の道がどのようなものかも知らず、
また、妊婦の胎内での骨々がどのように成長するかを知らないのと同じように、
すべてを成し遂げられる神のみわざを知ることはできない。

朝、あなたの種を蒔け、夕方も手を休めてはならない。

あなたはどれが成功するのかを知らないからだ。
あれか、これか、または両方が同じように成功するもしれない。

 どれが成功するかは誰も分からないからこそ、今は見込みがないと思えても、将来的な成功の可能性を期待して、今、なすべきことを、リスクを恐れずに行うことの勧めです。

 日本のキリスト教会も、不思議に、バブル崩壊以降、低迷、または縮小を余儀なくされています。なぜなら、日本のような社会では、少数派のキリスト教会に属するということは、リスクが大きすぎるように見られがちだからです。
 この数十年、日本の教会を支えているのは、二世、三世のクリスチャンです。かつての48年前の僕のように、それまでの村社会を離れて、新しい信仰への決断をするという人はどんどん少なくなっています。
 僕は別に48年前に人生の何かの行き詰まりに直面して、クリスチャンになったわけではありません。ただ、キリストを信じる生き方に、夢と希望を見出すことができかたらです。それは、当時の自分にとっては、株式投資などよりもはるかにリスクが高い決断と思えました。
 信仰の決断も、ビジネス上の決断も、共通するのは、明日が見えない中で、今、ここで自分の心を動かすことに一歩踏み出すということです。

 自分の心に浮かぶ夢に動かされ、リスクを引き受ける生き方から、さまざまな新しいことが生まれます。
現在の株高傾向は、そのような社会のムードを生み出す契機になるなら……と期待しております。