先日のメッセージでは、「携挙」と呼ばれる神学概念に絡んでテサロニケ人への手紙4章から話しました。最初に口走ってしまいましたが、フーテンの寅さんにも分かる話し方に心がけましたが、どうであったか、感想をお聞きできれば幸いです。
でテキストを覧いただけ、簡潔にしたメッセ―ジもお聞きいただけます。
1988年の夏の米国で、「1988年に携挙が起こる88の理由」という文書が400万枚部売れたとのことです。そのもとは、ハル・リンゼイという牧師が1970年に Late Great Planet Earth(邦訳1982年「地球最後の日」という題で「いのちのことば社」から発行)を書き、それが今までに2800万部も売れるという大ベストセラーになったことにあります。それは1948年にイスラエルという国が成立し、それから40年が経つ1988年までにかつてのエルサレム神殿が再建される可能性があり、それを契機に世界に大きな混乱が起きるが、その前にクリスチャンが天に携挙されるという話かと思われます。このハル・リンゼイを中心に「Pop(大衆)Dispensationalism」という幅広い運動が起き米国の政治にも大きな影響を与えるようになります。
1984年の故レーガン大統領の再選運動中に、彼は少なくも五回にわたって、「ハルマゲドンの戦いがこの世代の内に、しかも中東で起きる可能性がある」と述べたと言われます。
また2003年のイラク戦争の際には、ブッシュ大統領が「ゴグとマゴグが中東で働いている。聖書の預言が成就しているのだ」と語っていたとの記録があります。
また2000年前後には「レフトビハインド」という携挙神学をモチーフにしたビデオが次々と出され、800万部が売れたとも言われます(2014年映画化)。そして、そのような福音派での大衆ディスペンセーション主義が、トランプ大統領の誕生の原動力になったとも言われます。
私たち福音自由教会の流れは、1950年で合併成立した米国福音自由教会から生まれています。その当初の神学的基礎は、ディスペンセーション(計り分ける)神学と呼ばれます。それは異邦人中心のキリスト教会とイスラエルの救いを分けながら調和する神学です。その中心的な神学とは(古典的な意味)、神はイスラエルの救いのための特別な計画を持っておられ、旧約預言が今この時代に成就する。その結果、新しいイスラエルを中心とした千年間の平和がこの地に実現するが、それのまえに大患難の期間があり、真のクリスチャンはその大患難期の前に携挙されるという教えです。
米国の教会ではその教えが幅広く受け入れられており、それが福音派を中心的に支配していた神学と言われます。私はもとルター派の教会で洗礼を受けていますので、この教えには若干違和感がありましたが、聖書を自分で読み自分の生活に適用することを大切に、また人々に福音を宣べ伝えることを大切にするということで、この教理とうまく折り合いをつけながら34年間、福音自由教会で仕えてきました。
ただ、福音自由では、政治との距離感を大切にすることを含め、40年ほど前から、この への見直しの動きが強くなっていました。それは大衆化されたディスペンセーション神学に対する疑問の広がりとも相まっています。
最近、神学者たちの間では、このディスペンセーション神学は、あまり評価されなくなっています。そのあたりの変遷が The Rise and Fall of Dispensationalism(Daniel G. Hummel 2023年 Eerdmans 380頁)という本に記されています(友人から教えられ、昨日から今朝まで一気に流れを読みました。著者はこの神学の中で育ってきた方です)。
僕はこれを読みながら、この大衆化されたディスペンセーション神学の行き過ぎと気持ちの上で戦ってきたことに気づかされました。
という尊敬する学者が40年ほど前に、ディスペンセーション神学には同意していませんでしたが、それに異論を唱える人に、「彼らは私たちの兄弟なのだ」と厳しくたしなめたと言われます。
僕は敢えて福音自由の流れに入ってきました。ですから、旧約におけるイスラエルの預言から現在を見るということをいつも大切にしてきました、だから半分のメッセージは旧約から話しています。福音自由の柔軟性が大好きです。
今、信仰箇条の変更が課題になっていますが、それが、より深く聖書を学び、聖書自体から互いの相違を受け入れ合うという流れになることを心より期待しております。