米国の戦争の歴史〜伝道者の書

フランスの歴史、家族人類学者のエマニュエル・トッドが「第三次世界大戦はもう始まっている……米国はウクライナを“支援”することでウクライナを“破壊”している」という衝撃的なタイトルの本を書いています。

そのような中で、僕の友人の一人が、「今回の戦争で一番、得をしているのは米国ではないか……ドル高とは、世界中のお金が米国に今集まっているということ……資源価格や穀物価格の上昇は、米国の産業の利益になるばかりか、軍需産業を繁栄させている……米国は二十年に一度、武器の在庫一斉セールのようなことをしているのではないか」と語っていました。

実際、今から二十年前は、あのアフガニスタン、イラク戦争がありました。

その二十数年前の1979年には、ソ連がアフガニスタンに大軍を送り政権を転覆させながら、9年間に及ぶ泥沼の戦争へと入って行きました。それに対し、西側諸国は一斉にそれを非難するとともに抵抗勢力に驚くほどの武器弾薬を支給しました。それが後のタリバンを育てたと言われます。(どこか、現代のウクライナ戦争に近い構図があります)

ただそれに近い1983年、米国はカリブ海の小国グレナダに大軍を送り、親米政権を樹立させるようなこともしています。

またその約二十年前、1965年、米国は北ベトナムに大規模な空爆を始めベトナム戦争が泥沼化して行きました。そしてその少し前、1950–53年は朝鮮戦争、1941–45年 第二次大戦参戦、1917、18年は第一次大戦参戦、1898年はカリブ海支配をめぐって米国とスペインの戦争、1861–65年は奴隷解放を巡っての南北戦争と呼ばれる内戦、1846–48年はテキサス等の支配権を巡っての米国とメキシコの戦争、1812–14年は米英戦争、1775~83年は英国からの独立戦争と遡ることができます。まさに米国は建国以来、数十年に一度ずつ大きな戦争を続けてきました。

(日本は1868年の明治維新を巡っての内戦、1877年の西南戦争、1894年日清戦争、1904年日ロ戦争、1931年満州事変から日中戦争に拡大、1945年までの第二次大戦という流れ、それは「77年間の戦争の歴史のあと、77年間の戦後の奇跡的な平和の時代」と呼ぶことができましょう)

それぞれの戦争に、米国の大義がありました。米国民が血を流してくれたおかげで保たれた世界平和があります。僕は個人的には、戦争を裏で操るディープステート論とか、その他の陰謀論にくみすることはありませんし、基本的に、自由を尊重する米国の文化が大好きです。しかし、米国は戦争を始めることに躊躇が無さすぎるかもしれません。今回のロシアのウクライナ侵攻にしても、ドイツのメルケル前首相は戦争を回避すべくあらゆる交渉を粘り強く行ってきましたが、今や、ロシアに肩入れをすすぎたと非難されています。

それにしても、今回のロシアによる攻撃は、聖書に登場する2700年前、2600年前のアッシリア帝国やバビロン帝国の姿に似ているようにも見えます。ロシアのプーチン大統領が昔の独裁者に似ているとしたら、それに対して西欧諸国が一致団結してその横暴を阻止ししようとするのは当然とも言えます。

しかし、国際政治的には、ウクライナを巡って、英米とロシアが戦争をしているという見方も否定できません。ただロシアに圧倒的に非難すべきところがあるため、ドイツやフランス、また日本は、ウクライナを積極的に支援している米国や英国と歩調を合わさざるを得ません。ウクライナに一方的な犠牲を強いる停戦は絶対に避けたいと思う一方で、ウクライナの平和はロシアにある程度の妥協をしないと実現しないことも事実です。米国主導でロシアを追いつめることが本当に、ウクライナの一般の人々のためになるのか、冷静に考える必要があります。

三千年前から変わっていな国際政治の現実の中で、改めて伝道者の書のことばを思い巡らします。1章2–11節抜粋私訳

「何と空しいことか!」と説教者は語る。

「何と空しいことか。すべては空しい!」と。

日の下で労苦すること、

そのすべての労苦が、人に何の益をもたらすというのか? 

……

何もかもが疲れることばかり。

誰も 語り尽くすことはできない。

目は見ても満足することもなく、

耳は聞いても満たされることはない。

今まであったことはこれからもあり、

今まで起こったことはこれからも起こる。

日の下に、新しいことは何もない。

「見よ。これは新しい!」と言えるものが、何かあるだろうか?

それはすべて、私たちが過ごしてきた、はるか先から既にあったもの。昔のことは忘れ去られている。そして、これから後のことも。また、そのずっと後のことでさえ、忘れ去られてしまう。

12章13、14節の結論——これらすべてを聴いてきたことの結論とは、

「神を恐れ。その命令を守れ」。

これこそが人間にとってすべてである。

神は、善であれ悪であれ、

すべての隠れたことについて、

すべての行いにさばきを下される。

私たちが今、得ている情報も、かなり偏っているかもしれません。いろいろなことが複雑に絡まっています。ですから、単純に、冒頭のトッドさんのように、米国が一方的に戦争を広げているという言い方には賛同したくありません。

私たちに今求められていることは、全能の神がこの戦争を一日も早く終わらせてくださるように祈ること、またウクライナの人々の痛みに共感して祈ること、それと同時に、何よりも今、ここで神のみこころを実践し続けることです。