嘘が生む戦争——真実が生む平和〜詩篇7篇、89篇

ロシアのウクライナ侵攻が一日も早く止まることを日々祈っていますが、ロシアが戦闘の口実に使う情報がいつもドイツに絡むものであることが残念です。

ずっとテレビでも報道されるように、プーチン氏はウクライナに広がるネオナチと戦っているという宣伝があります。しかし、少し落ち着いて考えたらわかることですが、伝統的にウクライナには驚くほど多くのユダヤ人が住んでおり、現在の大統領もユダヤ人の血筋を引き継いでいます。民族主義とナチズムは共鳴しやすい思想ではありますが、だからと言ってユダヤ人との深い関係を持つウクライナを、ユダヤ人虐殺のナチスと結びつけるには無理があります。

それともう一つ、ロシアに真実であるかのように伝わっているドイツ由来?の話があります。それは、現在のドイツの基礎を作るのに偉大な貢献をした19世紀の宰相ビスマルクが言ったことばとされています。「ロシアに勝つには、ウクライナをロシアから切り離せばよい……単に、関係を絶たせるだけではなく、ウクライナ人がロシアに反抗するように仕向けることだ。ウクライナのエリートの中にあるロシアに対する敵対心を刺激して、兄弟が兄弟に対して戦うように仕向け、殺し合うようにさせることだ……」
 
のようにビスマルクの写真と共にこの英語訳がネットの世界に出回っています。

しかし、ドイツの信頼できる研究機関は、ビスマルクがそのようなことを言うということはあり得ないと、ありとあらゆる反証を出しています。私たちの目にも、ビスマルク時代のウクライナにそのような力があったとは思えないことは明らかです。

現代のウクライナの領土は、ロシア革命を主導したレーニンの時代に、当時のウクライナの民主化運動を抑えるために生まれた妥協の産物のような面があります。それをプーチン氏は批判していますが……

結果的に、ウクライナの領土は、日本の1.6倍の面積、ウクライナの黒土耕作地は日本の全領土に匹敵し、鉄鉱石資源も豊富なばかりか、工業も発展し、原子力技術でも世界最高水準にあります。

ですから、ロシアにとってウクライナが敵対することは、途方もない損失になります。それでプーチン氏は、様々なスパイ工作によって、ウクライナの親ロシア政権を守ろうとしてきました。それが2014年のマイダン革命によって崩れると、今度は武力行使で、ウクライナをロシアにつなぎとめようとしました。

その際、用いられたのが上記のビスマルクのことば?です。ウクライナ人のロシアに対する反抗心は、西側諸国の工作によるものだ……多くのウクライナ人はロシアと一体の意識を持っているのに、西側諸国の離反政策によってウクライナがロシアに反抗するようになった……というものです。

しかし、その論理に立つなら、どうして、ロシアがウクライナの民間施設、特に小学校のような施設にミサイルを撃ち込む必要があるのでしょう。ロシアの攻撃の仕方は明らかに、反ロシア意識をウクライナ人に生み出すことになっています。

しかも、このような偽りの情報をプロパガンダに使った戦争によって、ヨーロッパ全体が、また多くの民主主義国家がウクライナとの連帯を深め、結果的に、ウクライナ人を永遠にロシアに敵対させることになっています。

まさに、ロシアの指導者は自分が蒔いた嘘の種によって、自滅に向かっています。そのことを詩篇7篇14、15節は次のように描いています。

  1. 見よ その者は不法を宿し
    害悪をはらみ 偽りを生んでいます。
  2. 彼は穴を掘って それを深くし
    自分が作った穴に落ち込みます。

要は、他人を陥れるために作った落とし穴に、自分が落ちて自滅するというもので、偽りの情報で始めた戦争は、自分を滅ぼすように作用するということを現わしたみことばです。

一方、聖書の福音は神の約束の真実に基づいています。それが詩篇89篇35–37節に神ご自身のことばとして次のように記されています。

  1. わたしはかつて わが聖によって誓った。
    わたしは決してダビデに偽りを言わないと。
  2. 彼の子孫は とこしえまでも続く。
    その王座は 太陽のようにわたしの前にあり
  3. 月のように とこしえに堅く立つ。
    その子孫は 雲の上の確かな証人である。

聖書のストーリーは、神がアブラハム、またダビデに与えた約束が守ら続けるという神の真実を現わすものです。しかし、ダビデの王座がとこしえに立つという約束は、不思議にも、貧しい飼葉桶の中に生まれ、私たちの罪を負って十字架にかかり、三日目に復活したイエス・キリストにおいて成就しました。イエスはダビデ王家を引き継いだ王として、この地上に平和を実現します。そのことがイザヤ11章では、「エッサイの根株から新芽が生え……真実がその胴の帯となる。狼は子羊と共に宿り……獅子も牛のように藁を食う」という弱肉強食のない世界の実現に向かいます。それこそがシャロームと呼ばれます。

イエスがダビデ王家を再建したという約束は、イエスを救い主と信じた人が、この地に平和を広げることとして現わされます。

神の約束の真実こそが平和の基礎です。偽りの情報は人を憎しみと自滅の導きます。