「主は天を押し曲げて降りてこられた」(詩篇18:9)
世界的な感染爆発(パンデミック)の中でのクリスマスなど、誰が想像できたでしょう。
しかし、このようなときこそ、ドイツの最高の讃美歌作者パウル・ゲルハルトによるクリスマスの讃美歌が心にしみてきます。この讃美歌は、ドイツの人口が地方によっては半減したと言われる三十年戦争の悲惨の直後の1653年に記されたものです。
詩篇18篇には、ダビデがサウルから追われ、死と隣り合わせに生きていた時に、「主はその宮で私の声を聞かれ……主は天を押し曲げて降りてこられた」と不思議な救いが描かれています。このとき、ダビデは確かに奇跡的な主の救いを体験するのですが、それから千年後に現れたダビデの子のイエスは、何と苦しみの暗闇のただ中に生きて、そこに希望の光を見られるようにするためにこの世に生まれました。全宇宙の創造主がひ弱で、無力な赤ちゃんとなってこの暗闇の中におりてきてくださったのです。
英米系のクリスマスキャロルは、天の御使いの大軍勢による輝かしい賛美を意識して歌われるものが多いですが、ドイツのクリスマスの讃美歌の主題は、徹底して「飼い葉桶」に焦点を合わせます。ですから、クリスマスの中心は、何よりも、神の御子がこの世界の暗闇のただなかに降りてくださったことに焦点が合わせられます。
このような年こそ、以下の最高のクリスマスの讃美歌を味わっていただきたいです。もともと異なったメロディーで歌われていたものに、1736年、あの J.S. Bach が美しく歌いやすいメロディーへと変えてくれました。
明日の当教会の各礼拝で歌われますが、以下で美しいアカペラの合唱をお聞きいただけます。ドイツの讃美歌集には9番までの歌詞が記されています。以下は、日本語で歌えるように小生が訳したものです。歌詞を味わっていただければ幸いです。
Ich steh an deiner Krippen hier
「飼い葉おけ(まぶね)のかたわらに」
1653年 Paul Gerhardt 作 曲は讃美歌107番
- まぶねのかたえにわれは来たり
いのちの主イエスよきみを想う
受け入れたまえやわがこころすべて
きみが賜物なり - この世にわれまだ生まれぬ先
きみはわれ愛し人となりぬ
いやしき姿で罪人きよむる
くしきみこころなり - 暗闇包めど望み失せじ
光創りし主 われに住めば
いのちの喜び造り出す光
うちに満ちあふれぬ - うるわしき姿仰ぎたくも
この目に見えぬきみが栄え
ちいさきこころに見させたまえや
はかり知れぬ恵み - 深き悲しみに沈みしとき
慰め満てる 御声聞こゆ
「われは汝が友 汝が罪すでに
われはあがなえり」と - 御救いの星よいといたわし
干し草とわらとに追いやられぬ
黄金(こがね)のゆりかご絹の産着こそ
きみにふさわしきを - 干し草を捨てよ わら取り去れ
きみがため臥所(ふしど)われは作らん
すみれ敷き詰め きみが上には
かおりよき花びら - おのが喜びを 望みまさず
われらが幸いきみは求む
われらに代わりてきみは苦しみ
恥を忍びましぬ - 主よわが願いを聞きたまえや
貧しきこの身に宿りたまい
きみがまぶねとし生かしたまえや
わが主わが喜び