マリアによる賛歌〜マニフィカート

新型コロナ蔓延で多くの方々が経済的な困窮に陥れられ、今年の10月の日本での女性の自殺者数は前年同月比82.6%増の851人となりました。つい先月も、米国のCBS NEWSで、「10月、自殺によってコロナの10か月間よりも多くの日本の命が奪われる」と衝撃的な見出しが躍りました。

一方で、日本の日経平均株価は30年ぶりの高値を目指しており、今年3月中旬にかけての急落後の安値との比較では、何と、五割も上がっています。歴史的には、感染爆発のたびごとに、社会体制の大きな変化が生まれてきたと言われます。現在の日本でも、新型コロナは、社会的格差をどんどん広げて行きそうです。

そして、このようなときに本来注目されるべきなのが、聖書の福音です。この待降節は、処女マリアの胎に救い主が宿られたことを覚える時期です。マリアは、自分が処女のまま、子を宿すと天使ガブリエルから告げられたとき、「あなたのおことばどおりこの身になりますように (Let it be to me according to your word)」と応答しました。まさに、Let it be の心です。

その後、マリアは父なる神への賛美を歌います。それはラテン語の冒頭のことばをもって、マニフィカートと呼ばれます。カトリック教会では特に、マリアが特別な崇拝の対象となりますから、このマリアによる主への賛美も、教会の伝統で大切にされ、伝統的にラテン語で歌われてきました。

最近では英国の作曲家 が1990年に新しい合唱曲を作り、世界中で歌われています。ユーチューブで見たら、何とそのトップに、西神戸混声合唱団による合唱がアップされました。

そして、このマリアによる賛美の核心こそ、天地万物の創造主が、誰よりも、弱い者、虐げられている者にあわれみの御手を差し伸べ、立場を逆転してくださるという内容です。まさに格差が広がる中でうめいている多くの社会的な弱者に対する福音です。

救い主は、当時、誰に目にも留まらないような辺境の地に住む処女に目を留め、彼女を救い主の母としました。そして彼女は、何とその子をロバのえさが置かれている飼い葉桶に生み落としました。貧しさのただ中に救い主が生まれました。そして、神は、ご自身を恐れ敬う者を高く引き上げてくださるというのが、マリアによる賛歌の核心です。

下記の訳は、原文ギリシャ語の語順を生かした訳です。この詩では語順が大きな意味を持っています。最初のことばが英語でいうマグニファイでラテン語にするとマグニフィカーになります。

そして、ギリシャ語の語順を生かした日本語に訳してみると、ラテン語の歌詞とほとんど同じ語順になりました。ラテン語のマニフィカートはありとあらゆる曲がユーチューブで発見されます。そのどれかをお聞きの上、下記の日本語ラテン語対訳を見ていただけると幸いです。

先に紹介したジョン・ラターによる合唱曲もいろんなところで歌われています。アドベントの時期その一つでも味わっていただければ幸いす。

ルカ1章46-55節 マリアの賛歌(マニフィカート)私訳

あがめます、わがたましいは主を。

Magnificat anima mea Dominum,

喜びたたえます、わが霊はわが救い主である神を。

et exsultavit spiritus meus in Deo salutari meo,

主が目を留められたからです、この貧しいはしために。

quia respexit humilitatem ancillae suae.

今から後(のち)すべての世代が私を祝福されたと見るでしょう。

Ecce enim ex hoc beatam me dicent omnes generationes,

力ある方が私に大きなことをしてくださいました。

quia fecit mihi magna, qui potens est,

そして、御名は聖(せい)であられます。

et sanctum nomen eius,

主のあわれみは、代々(よよ)にわたって及びます、

et misericordia eius in progenies et progenies

主を恐れる者に対して。

timentibus eum.

主はその御腕(みうで)で力強いわざを行い、

Fecit potentiam in brachio suo,

心の思い高ぶる者を追い散らされ、

dispersit superbos mente cordis sui;

権力のある者を王位から引き下ろし、

deposuit potentes de sede

低い者を高く引き上げられ、

et exaltavit humiles;

飢えた者を良いもので満ち足らせ、

esurientes implevit bonis

富む者を何も持たせずに追い返されました。

et divites dimisit inanes.

主はそのしもべイスラエルを助けてくださいました、

Suscepit Israel puerum suum,

そのあわれみを思い起こしながら。

recordatus misericordiae,

それは私たちの父祖に語られたとおりです、

sicut locutus est ad patres nostros,

アブラハムとその子孫に対して永遠に。

Abraham et semini eius in saecula.