ウクライナ軍の強さの秘訣——キリスト教会の交わり〜コリント第一の手紙12章

急に寒くなってきましたが、いかがお過ごしでしょう。何かご心配なことがありましたら、ご遠慮なくご相談いただければ幸いです。

今年の2月24日にロシアがウクライナに大規模侵攻したとき、多くの人々はウクライナの首都キーウはすぐに占領されるかと恐れていました。なぜ、それが守られ、今、ウクライナが反撃に出ることができているかの理由が分かりました。誰も戦争の長期化は望みませんが、ただ同時にロシアがウクライナを支配する状況はどうしても避けられるべきだと思います。今は、ひたすら、ロシア政権がある程度の秩序を保ったまま内部崩壊することを祈るばかりです。

今週初めに、友人から以下の を紹介されました。そこにはヴァレリー・サルジニーというウクライナ軍最高司令官の経歴や作戦の進め方と同時に、ウクライナ軍の変化が記されています。

サルジニー将軍は、2021年7月に46歳の若さで、ゼレンスキー大統領から最高司令官として抜擢されました。だれもが驚く人事でした。彼は2月のロシア軍の大規模侵攻に際して、多くのウクライナの地域がロシア軍に占領されることを見越しながら、首都キーウを死守することに戦力を集中し、同時に、空軍力を温存する作戦をとりました。四週間の間、辛抱してロシアの補給が続かなくなることを見越していました。ロシアの将軍ゲラシモフの戦略を徹底的に勉強していたようです。そして今、侵攻七か月後から、最初の四週間に占領された地を奪還しようとしています。

そこで鍵となるのがウクライナ軍の士気と戦い方の変化です。2014年にロシアがクリミア半島を占拠したときには、ウクライナ軍はまったく抵抗せずにロシア軍に投降したと言われます。当時は、ロシア軍に抵抗する力が全くありませんでした。

ドイツの前首相メルケルさんの伝記を読みながら、メルケルさんがどうしてプーチン大統領に必死に対峙しながら、後には破綻することが分かってるミンスク合意を作ったかの理由が書いてありました。それは、単純に、ウクライナ軍は戦えばすぐに負けることが分かっているので、ウクライナ軍が整えられる時間稼ぎが必要だったということです。

ウクライナ人にとっては、ロシアとの全面戦争は2014年以来、もう8年余りも続いています。その間、軍隊のあり方が昔のソ連時代の形から西側諸国の形に変ってきているとのことです。それは軍曹を中心とする下士官を独立した行動を認める形です。簡単に言うと現場中心主義です。一方、ロシア軍の形は、徹底的な中央集権主義です。戦う気力のない若者を、後ろから脅してでも動かす戦い方で、短期的には大軍勢を動かして敵を圧倒することができます。しかし、戦いが長引くと、内側から崩れ始めます。これが現在のロシア内部で起こっていることです。ウクライナの占領地をロシアの支配下に組み入れ、軍事力で脅しながら、支配地のウクライナ人を兵士として招集し、ウクライナ人同士で戦わせるようなことさえしています。

それに対し、先月のウクライナ軍のイジューム奪還作戦では現場の指揮官の活躍が大きく報じられているようです。ウクライナ軍には不思議な一体感があるようです。

現場の人々の判断を重視しながら、ビジョンを共有して、共同体の一致を保つというのはまさに聖書に書いてある協力体制です。

コリント第一の手紙12章には、教会における協力の仕方が記されています

皆の益となるために、一人ひとりに御霊の現れが与えられているのです。ある人には御霊を通して知恵のことばが、ある人には……知識のことばが……ある人には信仰……ある人には癒しの賜物⋯⋯奇跡を行う力⋯⋯同じ一つの御霊がこれらすべてのことをなさる⋯⋯それは、からだの中に分裂がなく、各部分が互いのために、同じように配慮し合うためです。

クリスチャンとはすべて御霊を受けている人を指します。それぞれに賜物が与えられています。それぞれのユニークさが生かされ、それぞれが現場でキリストの大使として生きるように召されています。現場中心主義、それぞれの自由な発想で、主に仕えるのがキリストの教会のあり方です。

権力の脅しによって人を動かそうとするロシアは今、内側から崩れようとしています。ただそれも別の混乱を生むことでしょう。

本当に、一人一人に神の霊が与えられて、この地に平和が広がることを願うばかりです。私たちはそのためにまず、身近なところから互いに愛し合い、助け合うという形で神の平和を広げることです。それとともに、ウクライナの地で弱い立場にある人々を積極的に助け、支え合っているキリスト教会の働きがあります。私たちが今ここでできる応援の仕方を考えて行きたいと思います。