イザヤ10章とウクライナ

国際情勢がまた混とんとしてきました。ウクライナに関して2月17日(先週の木曜日)に、ウクライナから移住した僕の友人の話をご紹介しましたら、まさにその通りの展開になっているので驚いています。彼が記していたのは、何よりもロシアがウクライナの親分気取りでいつも圧力をかけてくるという歴史です。民族的には近い面があり、言語も似ているそうです。その結果、多くのウクライナ人はロシア語が理解できます。ただ一方で、ウクライナ語を理解するロシア人はほとんどいません。

昨日、プーチン大統領が国内向け演説で、ウクライナという国の成立を1917年のロシア革命に立ち返り、「レーニンや同志たちがロシアの歴史的領土を切り離すという方法で作った」と発言したと報じられています。確かに、帝政ロシアのもとでウクライナという国はありませんでした。しかし、もともと共産主義革命は、「虐げられている人々を解放する」という名目て起こされたもので、ウクライナの人々に国土と一定の自治権を与えるというのは、その理念に沿ったことでした。それ以上に、もともとウクライナという民族の歴史があったからこそ、それがソ連内の自治共和国として生まれたに過ぎません。

しかも、ロシア革命の際に一番、レーニンが苦労したのもウクライナの共産主義化です。ウクライナは特に、大きな抵抗や内戦が生じました。その抵抗運動との融和の結果として現在の国土が生まれました。

ところがスターリンの独裁が1930年に始まって間もなく、集団農場に反対し続けていたウクライナの住民が、激しい迫害を受けます。ウクライナはソ連邦全体にとっての穀倉地帯ですが、収穫物が収奪されたばかりか、多くの住民から土地が奪われ、400万人から1400万人の人が餓死に追いやられたと言われます。これは という民族虐殺の例として有名です。

現在、ウクライナの東部に多くのロシア人が住んでいるのは、多くのウクライナ人が虐殺された結果に過ぎません。さらに第二次大戦ではドイツとロシアの両方からすべてを収奪され、国土が廃墟とされました。

1991年12月にソビエト連邦が崩壊する際に、最初に独立を宣言したのはウクライナです。そこにはロシアからの独立を果たしたいという熱い思いがあったからです。ところが、ウクライナでも民主主義の成立には時間がかかり政情不安定が続きます。ロシアは何度も介入を続けます。2004年に、オレンジ革命という反ロシア的な運動が起き、その結果としてユシチェンコ大統領が誕生します。彼は選挙運動中に毒物を飲まされますが、その背後にロシアの陰謀があったとも言われます。ただ、顔があばたになり、それで同情を買って、反ロシア票を集めて大統領になれたと言われます。彼は、先のホロ・ドモールというロシアによる虐殺を世界中に訴えます。

しかし、このユシュチェンコ政権も、内部分裂によってやがて倒れ、2010年から14年にかけて、親ロシア派のヤヌコービッチにが大統領になります。しかし、彼はしだいにウクライナ住民の反発を受け、2014年にロシアに亡命せざるを得なくなります。親ロシア派政権がこのように倒れると、今度は、ロシアが軍事力でウクライナに影響力を発揮し始めました。その時期に、プーチンが偽装工作によって、クリミア半島を併合し、現在、問題になっているウクライナ東部に親ロシア政権を打ち立てます。

私たちはロシアは大国だと思いますが、経済的には低迷を続けており、公式の国内総生産(GDP)の統計によれば、韓国よりも経済力が低くい状態になっています。GDPで量ったロシアの国力は日本の三分の一に過ぎません。ただ、経済統計に表れない闇取引があり、それによって膨大な軍事費が支えられているのかもしれません。

残念ながら、ロシアに真の意味での民主主義が実現したことはありません。1991年にソ連が崩壊してからの混乱が続き、プーチンが2000年に政権を取って現在22年目に入ってきています。ロシアが共産党一党独裁から解放されて三十年間のその三分の二以上の期間がプーチン氏の支配下にあります。

スターリンの独裁が1930年から53年までの23年間続きました。プーチン氏の支配はそれに匹敵する長さになりつつあります。いろんな意味で、独裁政権末期の症状を現わしているような気がします。まだ国力が保たれているうちに、軍事力でウクライナを押さえつけておきたいと思っていることでしょう。ウクライナはロシアにとっていろんな意味でかけがえのない国だからです。しかし、それを軍事力で圧力をかけて従わせようとする試みは、決して成功はしません。

イザヤ10章には、紀元前700年頃、エジプトまでをも支配し、その後、間もなく歴史から消え去ったアッシリア帝国に対する神のさばきが次のように記されています

主はシオンの山、エルサレムで、ご自分のすべてのわざを成し遂げるとき、アッシリアの王の思い上がった心の果実、その高ぶる目の輝きを罰せられる。それは彼がこう言ったからだ。
「私は自分の手の力でやった。
私の知恵でやった。
私は賢いからだ。
私が諸国の民の境を取り払い、
彼らの蓄えを奪い、
全能者のように住民をおとしめた」
イザヤ10:12、13

明らかにプーチン氏は、思い上がって、「諸国の民の境」を軍事力で無視しようとしています。確かに、彼は驚くほど有能で、その能力が国民から信頼されているのでしょう。しかし、自分の知恵や力を誇る者は、必ず、どこかで自滅します。それを、聖書は「神のさばき」と呼びます。

ウクライナの今後も心配ですが、ロシアの今後も本当に心配です。このようなことをしているプーチン氏の政権は長く持たないことは確かでしょう。しかし、そこで多くの住民たちが、政治の混乱によって翻弄されます。

力に対して力で対抗する代わりに、神のさばきの時を待つ姿勢が私たちに求められているような気がしています。