先日のパラリンピックの閉会式で、改めてその精神「失ったものを数えるな、残されたものを最大限に生かせ」ということばの意味をかみしめています。この時代の様々なことにそのまま適用できることばかなと思います。
ただこのことばは英語では少し違ったことばになっています。もともとパラリンピックの産みの親と言われる のことばから来ています。彼はユダヤ系ドイツ人で、ナチスドイツから逃れて英国で神経医学者として、傷痍軍人のリハビリのため競技会を1948年のロンドンオリンピックに合わせて開催したとのことです。
英語では It’s ability, not disability, that count(できないことではなく、できることこそが、大切だ)と唄われています。
これは、生まれつきの生き難さを抱えるすべての人に適用できることです。
たとえば私自身、自分の神経症的な傾向、過敏な感受性が、教会の指導者としてはふさわしくないと思って、それを改善しようと頑張った時期があります。しかし、自分を変えようと思えば思うほど、変わらない自分に目が向かい、自己嫌悪に苛まれました。自分が神にとっての欠陥商品であるかのように思えてきました。
しかし、以下の詩篇のことばに励まされました
詩篇71篇6、7節
あなたに 胎内にいるときから私は抱かれています。
あなたは 母の胎から私を取り上げてくださった方
私の賛美はいつもあなたに向けられています。
私は多くの人にとって奇跡と思われました。
あなたが 私の力強い避け所だからです。
自分の様々な生き難さや精神的な弱さは、出生時やその後の、母の苦悩を受けついでいる面があります。僕を生んだ時の母はとっても大変な状況に置かれていました。しかし、そのような中で、母のいのちも僕のいのちも守られ続けてきました。それによって培われた様々な忍耐力や生きる力もあります。
20年ほど前から発想を変え、自分が苦痛なくできることに心と時間を傾けだしました。まさに、できないことではなく、できることに目を向け、自分の人生のうちにある神の奇跡に目を向けるようになったのです。
そして、聖書の詩篇のことばを自分で翻訳し、またそこから感じたことを本にして出版したりしました。今、僕の詩篇の説き明かしをとおして、信仰に立ち返ることができたという人がいます。それが今、教会のホームページでも ようになっています。そしてこの10月からある教団の神学校で詩篇講義を始めることになりました。70歳を間近にして詩篇翻訳と説き明かしが自分のライフワークの一つになるのかなと思っています。
人はそれぞれ、できないこととセットにできることが与えられています。だからこそ皆、困難の中で今まで生きて来ることができました。
しかし、しばしば教育の中では、「できないことをできるようにさせる」ことばかりに目が向けられて、すでに今ここで「できること」のすばらしさから目がそらされがちにように思います。
パラリンピックの閉会式で、ルイ・アームストロングの名曲 What a wonderful world(なんとすばらしい世界か)という曲がみんなで歌われました。
この曲は1968年のベトナム戦争の泥沼化の悲惨の中で、世界中で歌われました。これは一見皮肉のようですが、下記のビデオでアームストロングが語っています。それは、今ここで私たちは互いに喜べるものがある。もしここで互いに愛し合ってゆくなら世界が変わるのだ……と。
まさに、できないことではなく、できることをやって行こうという精神です。
I see trees of green,
red roses too.
I see them bloom,
for me and you.
And I think to myself,
what a wonderful world.
I see skies of blue,
And clouds of white.
The bright blessed day,
The dark sacred night.
And I think to myself,
What a wonderful world.
The colors of the rainbow,
So pretty in the sky.
Are also on the faces,
Of people going by,
I see friends shaking hands.
Saying, “How do you do?”
They’re really saying,
“I love you”.
I hear babies cry,
I watch them grow,
They’ll learn much more,
Than I’ll ever know.
And I think to myself,
What a wonderful world.
Yes, I think to myself,
What a wonderful world.
Oh yeah.
(意訳)
私には緑の木々が見える、
赤いバラの花々も
私と君のために
咲いているんだ。
そしてひとり思うんだ、
なんて素晴らしい世界だと。
私には青い空が見える、
白い雲も
輝き祝福された日、
暗い神聖な夜。
そしてひとり思うんだ、
なんて素晴らしい世界だと。
虹の色彩、
空にあって何と可愛らしい
行き交う人々の
その顔にもあって
私には友人たちが握手しているのが見える、
「ごきげんいかが?」って言ってるよ
彼らは本当は言ってるんだ
「愛しています」って
私は赤ちゃんたちの泣き声が聞こえる、
彼らの成長を見守ろう
彼らはより多くを学ぶだろう、
私が知るだろうことよりも。
そしてひとり思うんだ、
なんて素晴らしい世界だと。
そうさ、ひとり思うんだ、
なんて素晴らしい世界だと。