詩篇81篇〜ガザ地区の悲惨とイスラエル

 毎日のようにガザ地区の悲惨なようすが報道されています。すべては二年近く前のハマスによるテロ攻撃から始まったものですが、現在のイスラエルの過激な軍事行動を正当化できる根拠にはならないと思われます。

 明日の礼拝では、一度に出エジプト記4章後半から12章までをまとめてお話しします。一回にまとめることで、もっとも大切なことが見えて来ます。
 現代のイスラエルは確かにユダヤ人にとっての悲願の国家建設の結果ですが、それは世俗国家に過ぎません。まさに中東地域の、報復を拡大させて相手を屈服させるという論理で動いています。
 しかし、多くの敬虔なユダヤ人たちは、真の救いは、神の圧倒的なみわざから生まれるということを信じていると思われます。
 出エジプトが神の一方的な救いのみわざでした。過越の祭りはクリスチャンにとっての聖餐式につながります。
 そして以下の詩篇81篇は、第二の出エジプトであるバビロン捕囚からの解放を歌ったものです。神の救いのみわざへの期待が、「あなたの口を大きく開けよ」ということばに現わされています。
 ともにイスラエルとパレスチナ難民の平和共存のためにお祈りして行きたいと思います。

詩篇81篇1–4、9–16節「あなたの口を大きく開けよ」

 3節に「新月と満月に 角笛を吹き鳴らせ。私たちの祭りの日に」と記されていますが、それは現在の9月から10月の最大の祭りの期間を指しています。
 レビ記23章24節には新月の角笛のことが、「第七の月の一日は……角笛を吹き鳴らして記念する聖なる会合を開く」と記されます。
 また、満月に関しては、「この第七の月の十五日には、七日間にわたる主の仮庵の祭りが始まる」(レビ23:34) と記されます。それはイスラエルの民が仮庵に住みながら荒野の生活を思い起こし、同時に、約束の地における豊かな収穫を感謝するときでした。
 そのことがこの詩の16節で、「主は 最良の小麦を御民に食べさせる。わたしは岩から滴る蜜で あなたを満ちたらせる」と記されています。
 そのように記される背後には、イスラエルの民が「異国の神を拝んで」(9節)、「彼らの敵を征服」(14節) することに失敗し、様々な試練に会って、食べるものにも事欠くような事態に陥ったからと言えましょう。
 そのような中でこの詩では、イスラエルの民にとって何かの難しい悔い改めの実を結ぶことを命じる代わりに、まず最初に、「喜び歌え 私たちの力なる神に。喜び叫べ ヤコブの神に。ほめ歌を歌い タンバリンを打ち鳴らせ……」と、喜び祝うことが命じられています (1、2節)。
 彼らが何よりも覚えるべきことは、イスラエルの神ご自身が、「わたしは あなたの神 主 (ヤハウェ) である。わたしが あなたをエジプトの地から連れ上った」(10節) という原点だからです。

 その上で、主ご自身が「あなたの口を大きく開けよ。わたしがそれを満たそう」と驚くべき命令を与えてくださいました。それは、人は困難のただ中で、目先の問題の解決ばかりを計り、神の救いのみわざの原点を忘れてしまうからです。
 私たちは神が既にどれほど偉大なことをなしてくださったかを覚え、喜び歌うべきなのですが、それと同時に、神が将来に、どれほど偉大なことができるかを心より期待する必要があります。
 仮庵の祭りの前の第七の月の十日は「宥めの日」(レビ23:10、第三版までは「贖罪の日」)。それはイスラエルの民が年に一度、自分たちの罪を徹底的に思い起こし、「雄やぎを屠り、その血を垂れ幕の内側に持って入り、この血を」、契約の箱の上の「宥めの蓋」の「上と」「前に」かけるという厳かな罪の贖いの日でした (レビ16:15)。それは神との和解を新たにし、それによって神がイスラエルの民のただ中に住み続けることができるためでした。
 私たちのためにはイエスこそが「宥めのささげもの」または「宥めの蓋」となってくだいました (ローマ3章25節とその別訳)。
 かつて、主は「宥めの蓋」の上から、「二つのケルビムの間」からモーセに語られましたが (民数記7:89)、それがバビロン捕囚の際に失われました。しかし、十字架はイエスが新たな「宥めの蓋」となってくださったことを意味します。それは父なる神がイエスによって私たちの間に住み、イエスを通してお語りくださることを意味します。イエスこそが神殿の完成なのです。
 キリストにある圧倒的な救いが、私たちのために新たにされ続けています。私たちも「口を大きく開け」ながら、主の十字架と復活において始まった「新しい創造」(ガラテヤ6:15) の恵みを心から感謝して受けつつ、その恵みを喜び歌うべきでしょう。


【祈り】神がキリストにいてなしてくださった偉大なみわざを繰り返し思い起こし、喜び躍らせてください。そして、キリストのうちにある恵みを体験させてください。