連日のように、イスラエル軍によるレバノンに拠点を置くヒズボラへの激しい攻撃が報じられています。
ガザ地区におけるハマス掃討作戦が終わりに差し掛かったと見られる中、イスラエルのネタニエフ政権は、ハマスにまさる軍事力を持つとも言われるヒズボラへの激しい攻撃を始めました。
昨年10月7日にハマスがイスラエルを奇襲攻撃し、多くの人々を人質に取ったことから、イスラエルのハマス殲滅作戦が始まりましたが、その直前の世界は、「アブラハム合意」という名のもとに、UAEやバハレーンなどとイスラエルの国交正常化が進み、他のアラブ諸国もそれに追随しそうな動きが見られていました。
ハマスのテロ攻撃は、そのようなアラブ諸国の動きに釘を刺し、アラブ諸国を反イスラエルへと再び動かすための自爆テロ行為であったとも見られます。
ハマスは、自らを犠牲としてイスラエルの激しい攻撃を引き寄せ、無垢のパレスチナ難民を道ずれにすることで、世界中にイスラエルの横暴さを印象づけました。それが成功して、世界中で反イスラエルデモが沸き起こりました。
今回のイスラエルのレバノンへの越境攻撃の際にもイスラエルとのある程度の友好関係を保ってきたヨルダンのアブドラ国王自らが、国連総会で、イスラエルの攻撃を激しく非難しています。
残念ながら、アブラハム合意に動き出したアラブ諸国を反イスラエルへと動かそうとしたハマスの自爆テロの狙い通りの国際情勢となっています。
テロとは、一般民衆の恐怖心を煽って、政治を混乱させ、自分の目的を達成する手段です。残念ながら、イスラエルはハマスの期待通り、またそれ以上の動きをして、アラブ諸国ばかりかイスラエルと友好関係にあった世界の国々を敵に回すような動きをしています。
これは今から二千年前に、ローマ帝国の挑発に乗って、エルサレムでの反ローマ軍事行動を起こして、自滅し、二千年間の流浪の民となったときと同じことになりかねません。
イスラエル政権は、恐怖心に煽られるように、自分たちを攻撃しそうな拠点を破壊することに必死になっていますが、これは全世界を敵に回す行為になりかねません。
しかも、そのような中で、一部の米国の保守的な福音的な教会は、独自の神学によってイスラエルを一方的に支持しているとも報じられています。
イスラエルを巡っての争いは、大患難期の訪れの兆候であって、それはキリストの空中再臨が近いことのしるしである、大患難期に巻き込まれたくなかったら、自分の信仰を明確にしようという、恐怖を煽るような伝道活動と結びついているとも報じられています。
今や、そのような解釈を支持するクリスチャンは少なくなっていると思いますが、私たち福音自由教会はそのような米国の保守的な教会の伝道によって生まれていると言われる面もありますので、そのような報道がなされるたびに、残念な思いを味わいます。
しかし、旧約聖書のイザヤ書が預言している世界は、当時のイスラエルが大国アッシリアとエジプトに挟まれて、二股外交を続けて、自分の身を守ろうとしたことに対し、「その日……エジプト人はアッシリア人ととともに主 (ヤハウェ) に仕える」(19:23) と記されています。
それはやがて全世界の民が、アブラハムの父なる神に仕えるようになるという預言です。イエスはイスラエルの王として、そのような世界を実現するために現れましたが、そこでイエスが言われたのは、軍事力で問題を解決しようとする人々に対して、「剣をもとに収めなさい。剣を取る者はみな剣で滅びます」(マタイ26:52) ということばでした。
軍事力でテロの温床である憎しみの問題を解決することはできません。イスラエルの指導者が、真のイスラエルの王イエスのことばに耳を傾けてくれるようになることを願うばかりです。