苦悩の意味——フランクル「平和をつくる者は幸いです」

以前からご紹介しておりましたNHK Eテレ「心の時代」ヴィクトール・フランクルの第六回目 最終回が放映されました。 はそのダイジェスト版12分に縮めた動画です。

 第六回目は、フランクルが強制収容所から生還し、ウィーンに帰った後に、エリーというカトリック教徒の女性と出会い、結婚に導かれて、彼の人生が開かれていったという分かりやすい話しが中心です。
 彼は晩年に「苦悩する人」という本を書き、それを妻のエリーに献げました。そこで彼女への感謝の言葉が次のように記されています

あなたは、私を 苦悩する人間から 愛する人間へと変えてくれました。

 残念ながら、「教会に行ったけど、何も良いことがなかった」という人がたまにいます。
 僕はいつも、「神様を信じると、幸せになれますよ」という代わりに、「神を信じても、信じていなくても、人生には必ず、苦しみが訪れます。そのとき、神に祈ることができる人は、その苦悩を通して、人生をより豊かにすることができます」と言うようにしています。

 まさに、そのことがこの第六回目の放送で語られていました。

 そこで、私たちの人生では、自分で選びようがなかった苦悩に直面しますが、生きている限り、何かの選択肢が残されている……たとえば、自分が間もなく死ぬと分かっていても、身近な人への感謝の言葉を伝え、永遠の遺産を残すことができるというようなことがあります。

 私たちは人生の瞬間瞬間で、「平和」を広げるために、身近な人に愛を伝えることができます。どのように隣人に語るかの選択肢は、最後まで残されています。

 今回は、最終回ということで語り手の勝田姉ご自身のお証しも入っています。一見、平和を作れなかった体験を通して、新たな平和を広げる人生へと導かれたことが、フランクルの愛弟子との出会いから語られています。

 なお、「苦悩する人」という視点は、 のサイトでもわかりやすく紹介されています。

 私たちはだれしも、苦しみには会いたくはありません、気楽な人生を過ごしたいと思うのが正直な気持ちでしょう。
 しかし、人生には、必ず、降って湧いたような苦難が訪れます。しかも、人を愛し、人との関係を築こうとするとき、愛すること自体が新たな苦悩の原因になります。
 しかし、それでも、人は、人を愛することで生きる喜びを味わい、人生を豊かにすることができます

「愛するとは、傷つくことなのですね」と言われることがあります。
 それでも、私たちは、人を愛し、平和を広げるために、生かされているということを覚えたいと思います。

イエスは山上の説教で次のように言われました

平和をつくる者は幸いです。
その人たちは神の子どもと呼ばれるからです。
マタイによる福音書4章9節