バッハ作曲モテット「イエスは私の喜び」〜ローマ8章1–11節

 今度の礼拝では生まれて初めて、福音の核心とも言われるローマ人への手紙8章1–11節からメッセージをさせていただきます。牧会35年にしてようやくローマ人への手紙の講解メッセージに入っているからです。

 僕が牧師としての働きを始めたのは1989年からです。立川での礼拝が始まったのはその10月でした。
 今振り返ると不思議に、その直後のバブル経済の崩壊から日本の教会も低迷期に入って行きました。
 当時はいろんなことにチャレンジしました。

 個人的に相談に載ってもらっていた精神科のお医者さんからは、「よくこのような難しい方々の相談に載って来られましたね」と感心されるほどでした。
 振り返ると、あまりにも自分の力を過信していました。

 そしてせっかく集ってくれていた多くの方々も、去って行かれました。「何をやってもうまくゆかない……」という失望感を味わっていました。

 そのときドイツの古い讃美歌「イエスは私の喜び」の歌詞が心にしみて来ました。外面的には失望ばかりなのですが、その中で、十字架に向かうイエス様を身近に感じることができました。
 しかも、この讃美歌を用いて、バッハがローマ人への手紙8章1–11節の歌詞を工夫を凝らした声楽曲にして、聖霊の働きを歌っているということが分かって本当に感動しました。バッハのこのモテットは、最高の聖霊論とも言われます。

 神学的な解釈ではいろんな意見があり得ますが、このバッハの聖書解釈を否定する人はまずいません。本当にイエスの救いの確信を、音楽を用いてバランスを持って歌っています。

 原曲の「イエスは私の喜び」という三十年戦争直後の混乱に満ちたドイツで1653年に生まれました。
 J.S.バッハは1723年にその六番までの讃美歌の間に、ローマ人への手紙8章1、2、9、10、11節の五つの節のみことばを解釈した声楽曲をはさみモテットとしました。

 その1番の歌詞(逐語訳)は以下の通りです

イエスは私の喜び、私の心の牧場、イエスは私の誉れ(宝)。
ああ、何と長く、ああ長い間、
不安な気持ちの中で、あなたを慕い求めてきたことか。
神の子羊、私の花婿よ。
あなたにまさって この地でこれほど慕わしい存在は
私に何もありません。

 これは混乱に満ちた目の前の現実に、「イエスの救いを見ることができない……」という葛藤の中で、イエスへの憧れを歌った名曲です。
 
 私たちも様々な課題をこなすことで心が一杯になり、イエスの救いを遠く感じること、また自分の救いを疑うようなことがあるかもしれません。
 しかし、私たちはこの曲でイエスの救いを、今ここで体験できます。

 以下のような歌詞と聖句が様々なアレンジの声楽曲で歌われます。
 原詩の逐語訳をしたいところですが、長くなりすぎ、メロディーに合わせることもできません。感動がぐっと減りますが、歌うことができる私訳をご紹介します。これは教会福音讃美歌422番に掲載されている高橋訳です。
 
 ローマ書の聖句の声楽曲が続く歌詞の意味と結びついています。
 聖句引用は私訳です。(バッハが強調している部分は重複して記しています)。

  はとっても聞きやすいことばになっています。また字幕に英語を出すことができましたので、何を歌っているか想像していただけます。

 YouTube には日本の合唱団による多くの演奏が載っています。多くのバッハ愛好家が歌っていますが、未信者の方々がこのすばらしさが分かるというなら、聖霊を受けているクリスチャンはされにもまさって、この曲の価値をご理解いただけるものと思います。

1.会衆賛美 

わが喜び わが慰め わが主イエス 
この地にあり 思い焦がれ 主を求む    
神の小羊 いとしの花婿 わがすべてよ

ローマ8:1節別訳声楽曲 

こういうわけで、今や決してありません、決して処罰はありません、
キリスト・イエスのうちにある者には。
その人は、肉に従ってではなく、御霊によって歩んでいます

2.会衆賛美 

御手のもとに やすらぐ身に 敵はなし 
たとい悪魔 力尽くし 脅すとも        
罪と地獄が われを脅すとも 主はわが盾

ローマ8:2声楽曲 

それは、いのちを生む、いのちの御霊の律法(トーラー)が、
キリスト・イエスのうちにあって、あなたを罪と死の律法(トーラー)から 
解放したからです。まさに解放したのです

3.会衆賛美 

悪しき力 たけり狂い 迫るとも 
われは立ちて こころ安く 主に歌う        
神の御腕は 確かに伸ばされ われを包む

ローマ8:9声楽曲

しかし、あなたがたは肉のうちにではなく、御霊のうちにあります。
神の御霊は、確かに、あなたがたの住んでおられます。
だれかキリストの御霊を持っていないなら、
その者は主のものではありません。
キリストの御霊を持たないキリスト者はいないのですから

4.会衆賛美 

別れ告げよ 世の誉れや 世の栄え 
主イエスこそは 永遠(とわ)に朽ちぬ わが誉れ     
恥も悩みも われを主イエスより 引き離さじ

ローマ8:10、11声楽曲 

しかし、キリストがあなたがたのうちにおられるなら、
からだが罪をとおして死んではいても、
霊が義をとおしていのちとなっています。
霊がいのちとなっています。
今や、イエスを死者の中からよみがえらせた方の御霊は
あなたがたのうちに住んでおられるのです

5.会衆賛美

永遠(とわ)に眠れ 世のいざない 世の力
イエスを死より 復活させた 主の御霊    
わが内に住み 死ぬべきこの身も 生かしたもう

ローマ8:11声楽曲 

それゆえ、キリストを死者の中からよみがえらせた方は、
あなたがたの死ぬべき からだを生かすことになります、
あなたがたのうちに住んでおられる御霊をとおして、
あなたがたのうちに住んでおられる御霊をとおしてです

6.会衆賛美 

去れ!悲しみ 喜びの主 イエス来ます 
主を思えば 苦しみにも 安きあり      
わが苦しみを ともに担う主は わが喜び