ビートルズ Now and Then——ふたりはひとりよりも善い〜伝道者4:9–12

先日、11月2日に ビートルズの新曲「Now and Then」が、解散から53年ぶりにリリースされました。とってもとっても感動的です。以下はオフィシャルビデオの一つです

歌詞と私訳は以下の通りです

I know it’s true 僕は知っているよ
It’s all because of you すべて君のおかげなんだ
And, if I make it through もし、僕がやり通すことができたのなら
It’s all because of you それはすべて、君のおかげなんだ。

And, now and then そして その時、その時
If we must start again 再出発しなければならないとしても
Well, we will know for sure でも、僕たちは確かに知っている
That I will love you 僕が君を愛するということを

Now and then その時、その時
I miss you 僕は君を恋しく思う
Oh, now and then そう、その時、その時
I want you to be there for me 僕のために 君にここにいて欲しいんだ
Always to return to me いつでも、僕のところに戻って来て欲しいんだ

I know it’s true 僕は知っているよ
It’s all because of you すべてが君のおかげなんだ
And, if you go away もし、君が立ち去るとしても
I know you’ll never stay 僕は君がずっとそこに留まりはしないと知ってるよ

Now and then その時、その時
I miss you 僕は君が恋しくなる
Oh, now and then そう、その時、その時
I want you to be there for me 僕のために、君にここにいて欲しいんだ

I know it’s true 僕は知っているよ
It’s all because of you すべてが君のおかげなんだ
And, if I make it through もし、僕がやり通すことができたなら
It’s all because of you すべてが君のおかげなんだ

歌詞がとっても抽象的なので、いろんな翻訳の可能性があると思いますが、その時、その時、自分の人生のパートナーや、友人ことを思いながら、その時、その時を大切に生きること、でも同時に、相手の自由を束縛しないことの大切さが歌われているような気がしました。

この曲は、もともとジョン・レノンが1978年に自宅でピアノを弾きながら、カセットテープに録音したものと言われています。一度、1994年に他の三人のメンバーが、再生しようとしたけれども当時の技術では満足できる状態には再生できなかったとのことです。

僕がジョン・レノンの感性と表現力に心から感動したのは、ビートルズが解散した翌年にリリースされた Jealous Guy
という曲を聴いたときです。(美しい日本語訳もついています)

それは、ジョンがヨーコの気を引こうとしてかえって彼女を傷つけてしまう、自分の心の不安定さを赤裸々に歌ったものです。そこで自分をただの嫉妬深い男なんだと歌っています。信頼し合う二人の関係で、しばしば起きてしまうことを、何とも美しく描いています。ジョンは、精神的にとっても ヨーコに依存していました。(まるで、僕が洋子に依存しているように……)。その中で、意に反して、愛する人を傷つけてしまいます。そのような関係を修正するために、ヨーコは一時的にジョンを引き離します。でも、1974年に二人の関係は修復され、1975年にショーンが誕生します。ジョンは、公的な活動から身を引き、主夫としてヨーコとショーンに仕えます。その時期、日本で密かに過ぎしていた時期は、ジョンにとって最高の時となります。そして、そのような中で、ニューヨークで落ちついた生活を始め、再び密かな音楽活動を始めます。そのような中で生まれたのが、上記の曲です。

ですから、これは明らかに、僕の人生のすべての喜びはヨーコのおかげだと歌っているものです。でも、よく言われるように、ヨーコとジョンの関係が緊密になるにつれ、ジョンとビートルズの他のメンバーの関係がまずくなってきました。ですから、ヨーコはビートルズ解散の一番のきっかけだったとも言えます。

しかし、そのヨーコへの愛の歌を、ビートルズの他のメンバーが新しいビートルズの曲として45年ぶりに復活させました。よく言われることですが、「もっとも個人的なことは、もっとも普遍的なことである」という真理があります。

とってもすばらしいチームワークで次々と素晴らしい曲をともに作ってきたポール・マッカートニーには、この歌が、ジョンとポールの関係を歌っているように響いたかもしれません。夫婦でも友人でも、二人の関係はとってもとっても微妙で、互いが大切であるからこそ、かえって傷つけあってしまうということがあります。そんな二人の間におきる普遍的な感情の機微が、Jealous Guy と新曲 Now and Then に歌われているような気がします。

聖書、伝道者の書4章9–12節には次のように記されています。これは当時としては、夫婦よりも友との関係を描いた詩です。

ふたりはひとりよりも善い。
彼らには労苦において善い報いがあるから。
もし彼らは倒れても、ひとりがその仲間を起こす。

惨めなのは、倒れても起こしてくれる相棒がいないひとりの人。
また、もしふたりが寝れば暖かいが、ひとりならどうして暖まれよう。

しかも、もしひとりの強い人がいても、ふたりなら立ち向かえる。
さらに三つ撚りの糸は簡単には切れない。

最後の三つ撚りの糸とは、ふたりの関係の真ん中に創造主がいてくださる恵みが歌われていると考えられます。