ウクライナのゼレンスキー大統領のドイツ国会でのビデオ演説〜詩篇83篇

ウクライナのゼレンスキー大統領がドイツの国会で、これまでのドイツの政策を真っ向から批判するような演説を行ったことが話題になっています。それはドイツが、ロシアからの天然ガスのパイプラインの敷設に現わされるように、ロシアとの経済協力を深めて、結果的に、ドイツがロシアの今回の戦争資金を賄ったというような、とんでもない批判です。

メルケル政権がどれだけウクライナを守るために頑張ってきたかを無視するようなことが報じられていることに心を痛めました。

それで、実際に、そのドイツ語の通訳付きのビデオ演説を聞いてみました。するとゼレンスキーさんの必死の気持ちが伝わってきました。そして本当に心が動かされ、涙が出るほどでした。

やはり、人の話は、間接的に聞いてはダメですね。

ゼレンスキー大統領は、まさにドイツ国会を戦場と捉えて、ドイツの政治を動かそうとしていました。今のドイツの政権は、メルケルさんのキリスト教民主同盟に批判的な政党で構成されています。そして、過去の政策を否定するような動きを始めています。あえてそれを刺激するような意図が見られます。ゼレンスキーさんは、自分がいつ殺されるかわからないという切迫感の中で語っています。ですから、目の前の人の心を動かすことしか頭にありません。

彼は1948年6月に当時のロシア中心のソ連がベルリンを封鎖したときのことを語りました。ソ連は東ドイツのただ中に離れ小島のように存在する西ベルリンを封鎖して、西ベルリンの人々の心を萎えさせ、彼らが共産圏になびくようにと、力で彼らの心を動かそうとしました。

それに対し、米国や英国は、西ベルリンの住民の食べ物やその他の必需品を大空輸作戦によって支えました。「ベルリンの空の架け橋作戦」と呼ばれます。それが一年近くも続いたため、ソ連は封鎖を諦めました。

その後、反対に、東ドイツの人々が、自由を求めて、次から次と西ベルリンに移住を始めたため、今度は、ソ連が、西ベルリンを包囲する壁を作り、人々の西側への逃亡を阻止しました。それが1961年に作られたベルリンの壁です。

人々の自由への逃亡を阻害する壁が、今、ウクライナに築かれようとしているとゼレンスキーさんは訴えました。1948年には、西側諸国からの愛の贈り物が空から降って来ることで西ベルリンは守られました。しかし、今、ウクライナの空から降って来るのはロシアのミサイルと爆弾です。

ウクライナの空に飛行禁止区域を設定して、ロシア軍の攻撃を防いで欲しいというのがゼレンスキー政権の一貫した要求です。

NATO諸国には、ロシアとの直接対決を避けるために、それはできないという意見が大勢ですが、リトアニアなどのバルト三国はそれを要求し始めています。

僕にはその是非が分かりません。しかし、ゼレンスキーさんが明日の命の保証がないなかで、必死に、人々の心に熱く訴えかけるその気持ちが伝わってきました。彼にとっての演説とは、まさに、ことばによる戦争なのです。

ただ、それは人を屈服させるためのことばではなく、人の良心に訴える、人の理性や自由への愛に訴えることばです。

詩篇には、神への率直な祈りが満ちています。詩篇83篇1–4節には次のように記されています

神よ 沈黙していないでください。
黙っていないでください
神よ 黙り続けないでください

ご覧ください。あなたの敵が騒ぎ立ち
あなたを憎む者どもが頭をもたげています。

彼らは あなたの民に対して
悪賢いはかりごとをめぐらし
あなたにかくまわれている者たちに
悪を企んでいます。

彼らは言っています。
「さあ 彼らの国を消し去って
イスラエルの名が
もはや覚えられないようにしよう」

上記のイスラエルの代わりにウクライナという名を入れるなら、まさにウクライナ人の叫びになります。

私たちも詩篇83篇の合わせて、ウクライナの人々の叫びを神に訴えるべきでしょう。