小預言書の福音
12の小預言書の解説

小預言書の福音

旧約聖書の最後に収録されている小預言書をわかりやすく解説。
メシヤやペンテコステの預言など新約聖書の随所で引用される重要なみことば、人間の罪と神の怒り、それでもなお示される神の真実いつくしみ……豊かな内容を持つ12の書がリアルに描き出される。

発売日:2016年1月20日
発行:いのちのことば社
ISBN:978-4-264-03462-9
定価:2,200円(税込)

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「はじめに」

ユダヤ人の伝統の中では、小預言書は「The Twelve(十二)」と呼ばれ、ひとつの巻き物の中に、現在の私たちの聖書の順番で記されていました。それぞれ著者も時代のテーマも違うのですが、預言者イザヤのように神のさばきと救いに関して壮大なビジョンを語っています。

そして、これらの預言が語られた時代は、ダビデから始まってソロモンの後で二つに分かれたイスラエル王国がそれぞれ、アッシリヤ帝国、バビロン帝国によって滅ぼされ、その後、ペルシャ帝国の下で小さいながらも神殿を再建し希望を見出すという、人間的には不透明なときです。

それは、1990年以降の閉塞感に満ちた日本の状況に似ています。ですから、今から2750年〜2500年前という大昔、聖徳太子よりも二倍も古い時代に記されたことばは、現代の日本の社会や教会の現実にも深い関連性を持っていると言えましょう。

しばしば、預言というと、未来のことがあらかじめ神から知らされることとして理解されがちですが、預言書全体には、「イスラエルの死と復活」という一貫したメッセージがあります。神は、ご自身の救いのご計画を理解した新しい神の民を起こそうとしておられます。そして、そこには神の平和(シャローム)を全地に満たすという究極の目的があります。

なお、本書は十二の預言書各書のストーリーを概観する一般の方々向けの解説書ですので、参考文献は最低限しか記しておりません。また聖書の引用は、基本的に新改訳聖書第三版を用いておりますが、現在、全面的な翻訳改訂作業中ということもあり、できるかぎり、筆者の独自の私訳を用いさせていただきました。もちろん、翻訳改訂作業とは無関係です。

神学的には、1999年に英国の神学者N・T・ライト氏に出会って以来、彼の解釈に多大な影響を受けております。それ以来、改めて、新約の福音を旧約の預言の成就という観点から理解するという当然のことが腹の底に落ちました。私たちと同じ人間としての限界を引き受けられたイエスご自身が、ご自分の救い主としての召命を預言書から受け止めていかれました。またパウロの神学は基本的に預言書に記されたイスラエルの死と復活のメッセージから生まれていると思われます。

十二もの預言書が、それぞれの異なった時代と社会情勢の中において、創造主ご自身の啓示を受けて、それぞれ独自に記されたものですが、不思議にも、そこに記された希望のメッセージはすべて基本的に同じです。それは神がこの世界にご自身の平和(シャローム)を実現してくださるというものです。十二の預言書をまとめて読むことによってよりよく理解できる福音があります。新約の福音の豊かさを、ここから読み取っていただければ幸いです。

なお、本書は、身近な所に置いて、必要に応じて疑問の箇所を調べるための参考書としてお用いいただくこともできます。聖書自体を味わっていただければと、心より願っております。


目次

はじめに

ホセア1~3章「浮気女を怒り、愛する神」
ホセア4章1節~6章3節「主を知ることを切に追い求めよう」
ホセア6章4節~8章14節「神が喜ぶ誠実さとは?」
ホセア9、10章「正義の種を蒔き、耕地を開拓せよ」
ホセア11、12章「哀れみに胸を熱くする神」
ホセア13、14章「いのちの喜びの復活」
ヨエル1章1節~2章17節「主に向かって叫ぶ者の幸い」
ヨエル2章18節~3章21節「主に呼ばれて主を呼ぶ者の集まり」
アモス1、2章 「神は侮られるような方ではありません」
アモス3章1節~5章17節「主(ヤハウェ)を求めて生きよ」
アモス5章18節~6章14節「幻想の中で主の日を待ち望む者へのさばき」
アモス7、8章「きょう、もし御声を聞くならば……」
アモス9章「偶像礼拝からの救い」
オバデヤ書「おまえの報いは、おまえの頭上に返る」
ヨナ1、2章「主の御顔を避けることの愚かさ」
ヨナ2~4章「あなたは当然のことのように怒るのか」
ミカ1、2章「この世の権力者たちへのさばき」
ミカ3、4章「主の御計らいを知る幸い」
ミカ5、6章「平和への救い主とともに歩む」
ミカ6章9節~7章20節「主はいつくしみ(ヘセド)を喜ばれる」
ホム1章~2章2節「敵を用いて謙遜にし、その後に敵をさばく神」
ナホム2、3章「見よ。わたしはあなたに立ち向かう」
ハバクク1章1節~2章5節「神の真実に応答する者は生きる」
ハバクク2、3章「悲惨のただ中に生まれる喜び」
ゼパニヤ1章1節~2章3節「主を尋ね求めない者たちへの主の怒り」
ゼパニヤ2章4節~3章20節「主は喜びをもってあなたのことを楽しみ….」
ハガイ書「あなたがたの現状をよく考えよ」
ゼカリヤ1、2章「神のひとみへのさばきといやし」
カリヤ3~5章「奇跡の人として生かされる」
ゼカリヤ6~8章「だから、真実と平和を愛せよ」
ゼカリヤ9~11章「子ろばに乗った救い主」
ゼカリヤ12~14章「その日、一つの泉が開かれる」
マラキ1、2章「神殿再建後の倦怠感の中で」
マラキ2章17節~4章「主のさばきを侮る者へのさばき」

引用文献
あとがき