愚かさを知る〜箴言12:15、16:1–3

最近、連日のように新型コロナ感染対策分科会会長の尾身茂さんの発言が報じ
られています。

尾身氏は長らくWHOで感染対策に携わって来られた方ですが、医学を目指すよ
うになったのは、明治のキリスト者として有名な内村鑑三の息子さんが書いた本
を読んだことがきっかけであるとのことです。

のサイトで尾身さんへのインタビュー記事をご覧いただけます。

そこに次のように書かれています

医師になろうと思ったきっかけは、大学2年が終わるころ、クリスチャンとして名高い内村鑑三さんの息子の内村祐之さんによる『わが歩みし精神医学の道』(みすず書房)との偶然の出合いでした。これは医学書ではなく、内村さんの医師としての生涯を振り返った本ですが、読み終えて何かに取りつかれたように「医者になろう!」と思ったことを、今でも鮮明に覚えています。その数か月後、これも偶然、自治医科大学が第1期生を募集していることを新聞紙上で知り、「地域医療」という言葉が将来について悩む心の琴線に触れたのでしょう。自治医科大学を第一志望と決めました。

尾身さんの信仰に関してはよくわかりませんが、その人生観の背後に、聖書的な価値観が深く根付いているような気がしました。

イエスは、「私たちに反対しない人は、私たちの味方です」(マルコ9:40) と言われましたが、聖書の教えに共感されるかたの存在は、この日本では貴重です。

残念ながら、最近の尾身さんの発言は現在の政権中枢の方の反発を招いているようです。

ただ、私たちは彼の発言を丁寧に聞く必要があると思います。彼は決して、オリンピック開催の是非について政治的な発言をしているのではありません。

感染爆発下でオリンピックを開催するということは、普通の感染症対策の常識では考えられないことなので、政府は国民の方々にきちんと説明し、みんなが感染対策になお意識を向けることができるように導く必要があるということです。

しばしば私はドイツのメルケル首相の発信を紹介してきました。僕自身、彼女の発言を聞くと、今、この状況下で何を優先して考えるべきかが良く分かりました。

残念ながら、日本の政治家は、そのように国民全体に語りかける訓練を積んでおられる方が少ないように思われます。

緊急事態を宣言しているのであれば、本当に今、何が問われているのかを政府はもっと分かりやすく発信すべきでしょう。

しかも、その中でオリンピックを開催するというなら、そのようなリスクを取りに値する大切な行事だということを、またそれによって、日本全体にとって益となるということを分かりやすく発信すべきです。

また、その際に懸念されることを落ち着いて考えられるように分かりやすい情報を発信すべきです。

尾身さんは、極めて当たり前のことを言っておられると思います。

尾身さんの発言を、オリンピックの開催の是非を論じるというマスコミや政治の論調にすり替えられることが残念です。

この国では、いろんな課題が出るたびに、「あなたは賛成派か、反対派か」という村意識構造の対立関係になりがちです。

箴言12章15節には次のように記されています

愚か者には自分の歩みがまっすぐに見える。
しかし、知恵のある人は忠告を受け入れる。

これによると、自分の主張が絶対に正しいと信じられる人は、実は、とっても愚かな人かもしれないということです。

これはすべての対立関係に適用できる教えです。

さらに箴言16章1–3節には次のように記されています。

人は心に計画を持つ。
しかし、舌への答えは主 (ヤハウェ) から来る。
人には自分の行いがみな純粋に見える。
しかし、主 (ヤハウェ) は人の霊の値打ちを量られる。
あなたのわざを主 (ヤハウェ) にゆだねよ。
そうすれば、あなたの計画は堅く立つ。

アダム以来すべての人間は、自分を善悪の中心に置き、自分を絶対化することで問題を解決しようとする傾向があります。

ですから、愚かな人に限って、自分を絶対化する傾向があります。そして、自分を絶対化する能力が高い方が、この世ではしばしばリーダーシップを発揮します。

私たち自身もそのような落とし穴にはまる可能性があります。以上の箴言のことばを改めて味わっていただければ幸いです。